ロスに着いた初日の出来事 | 1991年の漂泊

ロスに着いた初日の出来事

1991年3月31日付けで某音楽会社を退社して、2週間もしないうちに、LAX,ロサンジェルス空港に着いていた。
LAXからVeniceビーチ行きの市営バスに乗ったけど、どこで降りていいのかよくわからず、とりあえず他の乗客と一緒に途中下車した。それから、結構歩いて、やっとベニスに着いた。日本で買ったガイドブックにあるように、ベニスの通りは賑わっていた。時差ぼけとカリフォルニアの天気のせいか、空がまぶしく、頭がぼーとしていた。とりあえず、その辺にあった小さいホテル(部屋数20くらい)に泊まることにした。部屋にチェックインしたときは午後4時ころにはなっていた。おなかもすいたので、どこかに食べに行こうと思って、ホテルのロビーを出ようとしたとき、アメリカ人に声をかけられた。いや、アメリカ人かどうかは知らない。カナダ人だったかもしれないし、イギリス人だったかもしれない。とにかく、白人だった。ロスは人種のルツボといわれるくらいだから、いろんな国から、いろんな人が来ている。そのころ、自分は英検2級は取っていたが、もちろんアメリカン・イングリッシュとブリティッシュ・イングリッシュの区別がつかなかった。この男、Delta航空に働いていて、飛行機のチケットが安く買えるらしい。私に、「アメリカ国内便のチケットが必要なら、任せろ」というのだ。自分は、今日ロスについたばかりで、他に飛行機に乗っていくことなど考えていなかった。とりあえず、2,3週間はロスの探検をして、できれば、英語の勉強でもしようと思っていたくらいだ。この男と話しながら(といっても、ほとんど男がしゃべりっぱなしで)、4,5分歩いて、レストランの前に来た。ベニスビーチの通り沿いのレストラン。通り側には窓もなく、ほとんど前面オープンな感じ。入り口には数人の客が列を作って待っていた。このとき、この男「おれが、中に入って注文してきてやるから、お金をくれ」といった。わたしは言われたとおり、とりあえず$20を渡した。それから、男は中に入っていって、見えなくなった。そのまま入り口付近で、10分くらい待ったけど、男は戻ってこない。おかしいと思って、中に入って探したけれど、男はいなかった。このとき、初めて騙されたとわかった。
一人で歩いてホテルに戻り、ロビーの受付の女性に聞いた。「さっきの男は、ここで働いているの?」。女性は、「知らない。あなたの友達だと思ったけど。」 体が震えた。人生でお金を騙し取られたのは、初めての経験だった。そのあと、恐ろしくなって、部屋に戻り、ロックしてから、次の朝まで一歩も外に出なかった。